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見直したい日本の樹木(前編)

2. 日本のツバキの魅力

茶花で人気の紺佑助(九州 朝倉市)
茶花で人気の紺佑助(九州 朝倉市)

ツバキは、サクラとならび日本の代表的な樹木として、古のころより人々に親しまれてきました。「日本のバラ」とよばれたツバキは、フランスの作家で有名なアレクサンドル・デュマ・フィスの小説「椿姫(La Dame aux Camelias)」1948年に登場します。また後にイタリアの作曲家ジュゼッペ・ヴェルディによってオペラ「椿姫」として上演されるにいたります。

ツバキの学名はCamellia(力メリア)といいます。ツバキの仲間は、アジアに約500種類もあります。日本にはツバキ属、ナツツバキ属、ヒメツバキ属、モッコク属、サカキ属、ヒサカキ属が自生しています。

ツバキといえば、みなさん何を思い浮かべるでしょうか? ご婦人方は「椿油」でしょう。椿油は、種子を絞った油で、食用油や整髪料として使われてきました。また、灯りの燃料としても使われていました。国内で最も多いヤブツバキの種子から絞った油は最高級油として扱われ、なかなか手に入りにくいものです。

園芸品種的にみれば、まず侘助(わびすけ)があげられます。「太郎冠者(たろうかじゃ)」という品種から派生したもので、一般のツバキに比べて花は小型です。開き切らずに筒状になるのが特徴です。

また、茶花として親しまれています。カンツバキは、通常サザン力の園芸品種として見られていますが、詳細は未定です。ツバキは万葉の時代からすでに観賞用として栽培されており、江戸・元禄時代には一大ツバキブームが巻き起こり多くの園芸品種や、江戸、肥後ツバキといった特色のある系統のものが作られました。「花壇地錦抄」には206種もの品種が描かれています。しかし、ほとんどの品種が失われてしまいました。

近年のツバキの人気から、また新しい素敵な品種が生まれてくるとロマンティックですね。


3. 雑木をいかした庭づくり

雑木をいかして植栽をするには、まず植物の自然を理解しておくとよいでしょう。
ただ単に日本の樹木をいくつか集めて植栽するだけでは、なかなか美しい自然感のある庭は創造できません。

言葉でいえば少し難しく感じられますが、植物の世界には遷移という摂理があります。
遷移とは漢字の意味どおり、移り変わりをいいます。
自然の状態でこの遷移スピードを考えると非常に長い期間を要するといわれますが、
人が意識的に植物を植えたり逆に樹を伐っていくと、遷移スピードは大きく変化します。

「里山保全」という言葉をよく聞きますが、この保全は人と山のかかわりやすい状態を保つことで、
遷移スピードを極端に制御していることといえます。
つまり、植物自体のもつ力を引き出し、摂理に逆らうのではなく理解していくことが庭づくりに活かされていくのです。
例えば、常緑の樹木を植えるときは、土壌環境にしっかりと有機物を混入してつくります。
落葉の陽樹に比べ、最初から有機物が含まれた土壌環境が必要であることを植物遷移が教えてくれます。

その地域の気候環境にあった植物を選択し、
うまく共生するような環境を意識すると健全な「雑木の庭」は、きっと素敵な空間に成長していくことでしょう。



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藤岡 成介(ふじおか せいすけ)
1963年兵庫県生まれ。ガーデニングによる花と緑があふれるまちづくりを提唱し指導している。園芸肥料メーカー勤務を通し本格的に植物との関わりを持つ。90年に独立。ガーデニングコンサルタント会社・環境文化センターを設立し、現在に至る。株式会社タカショー 顧問。家庭菜園を始める・続けるためのベストガイド『菜園生活パーフェクトブック』の監修・著。
監修:藤岡 成介(ふじおか せいすけ)