1. 環境の考え方(理念)
21世紀に入り、私達のくらしは豊な反面、あらゆる業界の環境面で多くの問題提言がされています。
くらしの環境に直接関係する業務を担う我々は、この環境についてどのように対応していくかを今後より分析し、かつ有機的に創造していく必要に迫られてきています。これまでのくらし空間演出は視覚的要素のデザイン性をはじめ機能性、利便性、経済性などを中心に高度化してきました。
その結果自然環境の視点でみた時、極端にいえば人のみの片寄った状態でのくらし環境が創造されてきたといっても過言ではないでしょう。ヒートアイランド現象、CO2問題、省エネ、犯罪の低年齢化にいたるまで身近で起こっている問題は我々にとって避けては通れない課題です。
環境といっても非常に大きな意味を持つ言葉ですので、まず2つに分けて考えることにします。1つは、我々の業務でもあるくらしの環境で、もう1つは自然の環境です。全ての環境を1つとして捉えると、多くの立場の異なる者同士が軋轢を生むことがよく起こります。
青空に映える美しい黄色の葉
ニセアカシア‘フリーシア’
(茅野市 パラクライングリッシュガーデン)
くらしの環境は人が創造していくことなのであたりまえのことですが、
それぞれの立場のものが自然の環境を考えながらまたは配慮しながら事業を進めていくと、
軋轢を生むことなく発展することと思います。
私自身、最近庭の仕事をすればするほど、人は何千もの間自然の環境の中から多くを学び、
くらしの環境を創造してきたかを感じます。
人と自然の関わり(共生)の奇跡は、簡単に崩れていくものではなく、
今後我々の知恵と工夫と努力によってさらに発展進化していくべきです。
ただ現在我々は時間に追いかけられたり経済的に不安定な状況の中にいると、
自分を見失い精神的な理念を考えることなく
「とりあえず・・・・」という環境になってしまっているような気がします。
魅力あるガーデンづくりは、魅力あるプランに始まります。
魅力あるプランはまず物ではなく、魅力ある人の考えることそのものであり、
物や形は後に自然に伴ってくることと私は考えます。
原点に戻り自然をよく観察し、自然を学ぶことから魅力あるガーデン創造は始まります。
2.植物環境と自然環境
植物は私たち人間と同じく生き物であるため周囲の自然環境によって大きな影響を受けます。
環境要素には、光、温度、湿度、土壌、大気、栄養分、季節の変化やその他の生き物などもあげられます。
(1)植生と気候帯
私たちの日本の気候は大きく3つに分けることができます。(沖縄県等の亜熱帯を除く)
1.照葉樹林気候帯…広葉常緑樹を指標とした気候帯(クスノキ・シイ・ヤブツバキなど)
2.照葉樹林・落葉樹林推移気候帯…氷河期以前には照葉樹林気候帯であった。
3.落葉樹林気候帯…ブナを指標植物とする。冷温帯の夏緑林が生える。
(2)植物遷移の過程
生物群集や生態系が長い間のうちに、環境と互いに影響しあいながら、一定の方向に変化していくことを遷移といい、最終段階に見られるような、それ以上変化しない安定した状態を極相(クライマックス)という。遷移において、火山噴火地や新島のように、まったく新しい裸地上で始まる遷移を一次遷移といい、土壌の形成から始まる。過去の火山噴出の正確な記録があると、遷移の過程が推定できる。火事や伐採などにより、群落が破壊されて裸地化したところで始まる遷移を二次遷移といい、一次遷移とは異なり土壌もできており、その中に種子も埋もれているので途中からの遷移となる。
- 岩石が風化し、やがて地衣、コケ植物が生じて少しの土壌を形成する。
- 風化が進み、土壌や腐植層が増えるに従って、種子を多くつけて散布能力が大きい一年生草本がはいってくる。
草原はやがて多年生草本の草原となる。 - 草原に陽樹が侵入する。陽樹が草本より高くなると、その影になった草本は衰えて低木林となる。
林内で腐植質はさらに増える。 - よく繁茂した陽樹林の林床は、光が不足するため陽樹の芽生えは育ちにくい。
したがって、陽樹は少しずつ耐陰性の大きい陰樹へと置き換わっていく。 - 陰樹の芽生えや幼木は、暗い陰樹林内でも成長する。
親木が倒れても次の代が準備されているので、いつまでも同じ形の森林が続くようになる(極相)
- 新しい湖沼は貧栄養湖である。周囲から有機物や土砂が流入するようになると、
植物プランクトンも増えてしだいに富栄養湖になる。 - 湖沼の周囲は浅くなり、沈水植物や湿正植物が増えはじめて湿原となる
- 湿原はしだいに周辺部から乾燥し、一年生草本や多年生草本を中心とした草原となる。
- 草原に陽樹が侵入し、乾性遷移とほぼ同じ過程を経て極相林となる。