5. テラスガーデン・インドアの植物
テラス・バルコニー・インドアに適した植物の選択
近年の地球温暖化や都市部を中心とするヒートアイランド現象から、テラス、バルコニーガーデンに適した植物として、地中海性気候や西岸海洋性気候の植物があげられます。日本の大半を占める温帯性気候のものですが、大きく異なるのは夏の暑い時期に雨量が少なく乾燥することです。テラスやバルコニーは、コンテナや鉢植えの植栽となり、露地植えに比べてどうしても乾燥気味になりがちです。
日本の植生は、大きく暖温帯と冷温帯、亜熱帯になります。冷温帯や冬季の豪雪地域では育成が困難です。寒冷地ともよばれるこのエリアでは、夏緑林(落葉広葉樹)や北方系のコニファー類が望まれます。寒冷地の植物であっても、鉢植えは地温よりも気温に近い温度になるため、冬季に根がダメージを受けてしまうことがあるので注意が必要です。鉢を凍らせないようにする工夫として、その鉢の素材にもよりますが、防寒服を着せるようにフェルトなどでカバーをするだけで凍てりから多少は守ることができます。このことは、室内の観葉植物にもあてはまります。本来常緑性のもので地上部が枯れてしまっても根がしっかり生きている場合には、春にまた新芽が出て復活してきます。地中海性気候や西岸海洋性気候の植物は高温で乾燥に強い植物が多く、硬葉樹と呼ばれます。主なものに、オリーブ、ゲッケイジュ、ユーカリ、カリステモンなどがあります。また、オーストラリア原産のユーカリやアカシア、カリステモンなどは露地植えすると非常に旺盛に成長してしまうので、コンテナで栽培する方が望ましいでしょう。水枯れを起こさない限り、器でも十分に生育してくれるので、転倒防止さえ考えれば自動灌水にしておいてもよいくらいです。
さらに、これらの植物には有用植物が多く緑化の目的以外に活用性が広がることもおすすめの理由です。オリーブやゲッケイジュは食材としても有名です。ユーカリのなかでもブルーガムやメディカルティーツリー、レモンマートルなどは最近人気のアロマの原料でもあります。精製されたアロマオイルも販売されていますが、葉を数枚摘み取り細かくして匂い袋のようにすれば簡単に活用できます。
5番目の部屋としてのテラスガーデンは
くつろぎのスペースとして
大切なくらしの空間になります
鉢にフェルト生地などを使って
カバーをするだけで凍てりから
守ることができます。表面も忘れずに
レモンマートルの葉を細かくして、
小さな器や皿に置くだけでも
さわやかな香りが漂います。
玄関や下駄箱の中など有用性が高い
簡易に壁面に設置できる緑化システムは、
まさしくウォールガーデン
灌水は自動でできる仕組み(株式会社伊藤商事)
レモンマートルは、乾燥させたものをお茶にしたり、匂い袋を下駄箱やタンスに入れておくと、レモンの香りがして防虫、抗菌剤として楽しむことができます。もちろん緑化としても景観的に優れ、刈込も強いことが、これらの樹木の特徴ともいえます。欧米では、古くからトピアリーという成形刈込の仕立てを楽しむ演出があります。今後さらに日本でもゲッケイジュをはじめ、さまざまなトピアリーが一般家庭にも普及していくことは間違いありません。
次にインドア(室内)で育てる植物は、亜熱帯、熱帯植物になります。欧米での「観葉植物」のとらえ方は、フォリッジプランツになり、葉の色彩や形、木姿を楽しむ植物をさします。したがって、室内の観葉植物は、トロピカルプランツと呼ばれています。つまり、気候環境の視点からの選択なので管理面での失敗が少なくなります。
熱帯地域では、日本のような四季の季節変化がはっきりとなく、年間が雨季と乾季に分けられます。熱帯性の大半の観葉植物は、高温期には、日本の夏の直射日光のような強い日差しは受けていないので、屋外では葉焼けを起こしてしまいます。一般において観葉植物を枯らしてしまう失敗の原因は、鉢内に水をためてしまい腐らせてしまうことが多いようです。最近では、水耕栽培に近いハイドロカルチャーや底面給水法の専用大型鉢も販売されてきているので、管理が行き届きにくい場所での期待が膨らんできています。さらに、壁面緑化専用の優れたシステムが販売されてきています。狭い場所でも、無機質な壁面でも、本物の植物で演出できる仕組みは画期的といえます。積極的に普及させていきたいものです。